疲れたときの“心のサプリ”に。書店員がおすすめする最果タヒのことば

こんにちは。
広島蔦屋書店の河賀です。

年の瀬も近づいてきました。
イベントも多くワクワクする時期ではありますが、気ぜわしくて疲れてしまうこともありますよね。

そんな時にわたしは詩を読むことがあります。
どうしてかというと、多分ですが詩は理解しようと夢中で読むというよりは、何気なく読んで味わうものだと思うから…ですかね。
意味を見出そうとするのではなく、ことばの表現や音の面白さを感じながらサラッと読んでもいいと思います。
かえって明確なメッセージのある詩は詩ではなくてもいいような・・・

あらゆる詩についていえば、正直よく分からない感覚や表現もあると思います。
それでも読んでいると自分の感覚にフィットする表現に触れることもあり、その自分では思いつかない表現し得ないものに魅せられる。
不思議な感覚になったり、胸がキュンとしたり、ぞわっとしたり。

また、よく分からなくても作者の世界観に触れられるのも詩の魅力だと思います。

現代詩の新たな可能性を示し続ける「最果タヒ」

そこで今回ご紹介したいのは「最果タヒ」さんです。
活字離れが叫ばれて久しい昨今にSNS世代の若者を中心に人気を博し、現代詩の新たな可能性を示し続ける最果タヒさん。

彼女の紡ぐ詩が魅力的なのは、まさに世界観そのものに力があるからだと思います。
ステキな装丁や文字デザインもその世界観のひとつですね。
わたしはSNS世代の若者ではありませんが、彼女の新しいことばの紡ぎ方に興味を持ち、サラッと読んでは微かな自分の感性の揺れを感じて楽しんでいます。

わたしが詩についてあれこれ言うよりも実際読んでいただきたいので少しだけご紹介します。

恋人たちはせーので光る

−ぼくがきみを好きだとしても。きみにそれは関係がない。割れてしまったガラスは依然より光を反射するから
座礁船の詩 冒頭部より引用

−私は日本人です、という一文から始まる落書きは、最終的に英語で終わっている。
超絶っ子 冒頭部より引用

夜空はいつでも最高密度の青色だ

−都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
青色の詩 冒頭部より引用

−そこにいるだけでいいって、愛しているって、コピーペーストみたいな言葉で心臓を守っている
渋谷の詩 冒頭部より引用

−他人の言葉は決して、私の正解にはならいと知っていて、ひとり、夜を未読にする。
空白の詩 冒頭部より引用

BRUTUS ことば、の答え

最果タヒさん、そもそもことばって何ですか?
言葉は、
人間と同じ。不完全で揺らいでる。
あなたと私が、わかりあえないまま、
それでも共に生きるために、
言葉はあると思います。

「BRUTUS ことば、の答え」より

詩は疲れたときのサプリに

普段あまり詩は読まない、という人(わたしもです)も疲れたときにこそ手に取っていただきたいのです。
もしかしたら短い詩が即効性のあるサプリになるかもしれません。

ことば、をいつもより少しだけ深く味わってみませんか。

今回ご紹介した本は、広島蔦屋書店にございます。(在庫がなくなっている場合もあります)
気になった方は書店員までお声かけください。