今読みたい、思いやりと優しさが詰まった一冊「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

こんにちは。
広島蔦屋書店の河賀です。
緊急事態宣言がようやく解除になり、徐々に平穏な日々を取り戻しつつあるようにもみえますが、あふれる情報と世の中の変容が、休業怠け癖のついたからだに応える今日この頃です。
毎日のように流れる痛ましいニュースや、ついつい見てしまうSNSに、怒り、悲しみ、勝手に疲れます。
そんな今、やさしくなりたいわたしがかわいい装丁とタイトルに惹かれて手に取った1冊「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」を今回はご紹介します。

「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」 大前粟生

主人公は男らしさ、女らしさのノリが苦手な大学2年生の七森(男の子)。
どうしてみんなみたいに恋愛が楽しめないのか悩みながら過ごす大学で、麦戸ちゃん(女の子)に出会い、一緒に大学のぬいぐるみサークル(通称ぬいサー)に入ります。

ぬいサーは表向きはぬいぐるみ愛好家の集まりに見えるけど実際は、人に言えない(言えないというのは変に思われるからとかではなく、話すと聞いてくれた人も傷つくかもしれないから)事を、ぬいぐるみに聞いてもらうサークルなのです。
それにしてもぬいぐるみとしゃべるなんて、と思っちゃいましたが・・・

ある日仲良しの麦戸ちゃんが学校に来なくなります。
麦戸ちゃんのことが気になりつつも、人並みの恋愛を試みようと七森は同じサークルの白城(女の子)と恋人になるのですが・・・

人が傷つくことに傷つく、鈍くなれない生きにくい若者たちのこの物語は、フェミニズムについて男性の立場から描かれた作品でもあります。
男性であることからは逃れられない七森は、男性によって傷つけられた人がいると自分が傷つき、自分の加害性に怯えます。
麦戸ちゃんが学校に来られなくなったのはある出来事がきっかけで、七森もまた後にある別の出来事をきっかけに人と会えなくなります。

それはどちらも顔をしかめたくなる出来事ですが、わたしがショックを受けたのはその出来事よりも、人の気持ちを思うがゆえにそんなにも傷つき悲しみ、苦しむ人々がいるということでした。

心に響く、優しさとは

壊れそうな胸の内を、相手のことを思うがゆえに吐き出せない人がぬいぐるみに話していたら、おかしいでしょうか。
弱いのでしょうか。

わたしはぬいぐるみとしゃべろうとは思いません、というかその資格がないのです。
苦しみや悲しみと向き合うことに鈍くなれるから。
それでも、そんなわたしでもぬいサーの人々のことを知ったように、もっとたくさんの人がぬいサーを理解したら、自分と違うことを受け入れられる社会が広がったら素敵だと思うのです。

怖がらせず、侵害せず、誰かと繋がりたいのに。
もがきながらも他者と共に生きていくことを手放さない人のやさしいやさしい小説です。(他3篇収録)

もう一冊のおすすめ本

「丸の内魔法少女 ミラクリーナ」村田沙耶香

魔法を使おう、戦うために。変容しよう、生き残るために。
理不尽な世界と闘うすべての人に贈る、魔法のコンパクト!
村田沙耶香ワールド全開!
フェミニズムやジェンダー問題にも切り込む、怒りとユーモアあふれる4篇を収めた作品集です。

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疲れた心を癒してくれたり、笑わせたりしてくれる本。
ぜひリラックスタイムに読書を取り入れてみてはいかがですか?